おるがにすと・クロニクル Chronicle of an Organist

momokokubu.exblog.jp
ブログトップ

<   2012年 05月 ( 2 )   > この月の画像一覧

緑、その後。

季節は初夏となりましたが、相変わらず一週間に雨6日+晴れ1日という悲惨なブリュッセル。
昨夜は雷がとどろいていたにもかかわらず、暑くなるわけでもなく、手袋にマフラーなしでは自転車にも乗れない気温。

しかし庭はそれにもめげずすくすくと育っているようであります!エラい。


さくらんぼの花
のその後の観察日記056.gif


e0203829_186786.jpg


カシスの花は咲いているという事にも気がつかないぐらいのささやかさ。葉の陰にはちいさな果物も実りつつあります。

e0203829_1825673.jpg


この前の写真と同じ壁のつるバラも、つぼみがつきはじめ、枯れたかな〜と思っていたクレマティスから伸び出た茎は、しなやかにからまりつつ空に向かっている。

e0203829_1895953.jpg


珍しくて初めて植えてみたアンコリーの花。グリーン・アップルという種類で、花弁も真ん中も緑色。これも近寄ってよく見ないと、周りのグリーンに溶け込んで「お花が咲いた!」というようには見えません。でも見れば見る程不思議な花なので、これからもっと開いていくのが楽しみです。

e0203829_18131626.jpg


ピンク色だったさくらんぼの花は、はなびらを落とし、細い茎を冷たい風に揺らせながら実をつけようとじっと耐えているように見えます。

e0203829_18155282.jpg

e0203829_18161884.jpg


それにしても!実になりつつある部分の茎はなぜ短いのか?花が咲いたところの茎はもっと細くて長いのに…??

庭にいると「自然の不思議に驚嘆する」と言えば美しいのですが、わたしの場合「どうしてなんだ?」「これは何?」「これはいつ咲くの?どうしてまだ咲かないのよっっ!」と、ギモンはあとをたたず、思わず天に向かって声に出し、むなしく質問を投げかける毎日。

そんな先週のある日、夫と仕事の打ち合わせで来ていたらしいバリトンの人が帰り際に庭を見に来た。
「神父になる勉強をしていますが、副業として住んでいる地区の公園などの庭師もやってるんです」
と言うではありませんか!


わたしは止めようもなく、思い切り質問爆弾を炸裂。

訊きたい事が多すぎてアセアセしつつ、名前など言わずに葉っぱを指差しながら

「こっちの子はこんななんですけど…」
と言えば、
「ああ、これね。カシスはxx使うとこのちりちりになったとこが良くなるけどでもまあたいした問題ではないから心配することないよ…んでこっちは秋のフランボワーズ、この庭は日当りがあれだからあーたらこーたら…」

まるで自分の庭のようにそこにある植物をちゃんと言い当てながらどんどん話が進むので、聞いていた夫はなにやら意味がわからずも面白がって大受け。

天から答えが降って来た日でした。











にほんブログ村 クラシックブログ 鍵盤楽器へ
にほんブログ村

にほんブログ村 海外生活ブログ ベルギー情報へ
にほんブログ村

にほんブログ村 音楽ブログ 音楽活動へ
にほんブログ村



035.gif

035.gif
[PR]
by momoyokokubu | 2012-05-16 18:37 | 園芸

子守唄

ヴァイオリンケースのふたを開ける音
それから弓を取り出す音がすると
猫は「部屋から外に出たい」と「言う」。

BVW1002のアルマンドが悪いのではない。

ヴァイオリンの練習がはじまれば
猫用の耳には高音過ぎるヘルツが鳴り出すことは必至だから
わたしは立ってドアを開けてあげる。
猫は部屋の外で聴けばいい。

楽器は鳴り、歌い、繰り返し、
温かくなって楽器ケースに少しの間休ませられる。

弦に飽きた指が鍵盤に休憩しに来る前にわたしは立ち上がり、ピアノに座る。
オルガンのためには書かれていないBVW1002の音のアタマから、
あこがれと嫉妬の気持ちを押さえられずにピアノで探し当てて行く。

気がつけば左手は通奏低音をつけはじめ
みつけられなかった和音は戻ってひろいなおす。

砂のようにこぼれていく時間にしるしをつけていくような
バッハの音符ひとつひとつを
ビーズつなぎみたいに注意深くたどっていき、
最後のカデンツが空気をふるわせたら
あとは指を鍵盤から上げなければいけない。

なんて惜しい。

次のページも触っていいかな。
ヴァイオリンの気持ちを傷つけないように
ピアノは遠慮しながら先を読みすすんで行く。

ぱらぱらめくって探してみると
BVW1005はそこに泰然と構えていた。
はちょうちょう。
と、ひらがなで書きたくなる調。

ピアノがだんだん羽ばたいて行くような
スラーの音型をアダージョでなぞっていった時
わたしはじぶんの肉体が色薄くなってきた気がした。

そのとき目の前にア・ラ・ブレーヴェのフーガが横たわっていた。
それは予兆のような、ひとつ向こうの世界のような、あるいは「知らせがある」というような
風采でそこにいた。


「ママが死んだらこれお葬式で弾いてもらえるかな。
あの、うん、全部、このBVW1005。
フーガは、もちろんさあ、『正しいテンポで』。
あ、でも、自分のお母さんのお葬式ではやっぱり弾けないよねえ、
…誰かほかのひとに弾いてもらおうね。」


あいかわらずの妄想母が深く考えもせず口走ると
娘はひとこと
「いいよきっと弾いてあげるよ。」
何故か殊勝な感じの小さい声で答えた。

冗談だけどね、ホラ、バッハがあんまりこうだから、へへへ…

わたしは立ち上がってソファに移った。

やっと空いたので娘はピアノに近寄ると
昔習ったインヴェンションを弾いた。

聴いていたらもっと弾きたくなって椅子を奪い返し
ゴールドべルグ変奏曲の主題を弾く。
ヴァイオリンみたいに弾いてみた。

ひとしきり
アポッジャトゥーラやダブルモルデントのしるしを
「どうやって弾くのお」
と知りたがる娘に説明し
二人でフレーズごと互い違いに弾きっこしたあとで

娘は立ち上がると
BVW1005をヴァイオリンの譜面台に乗せた。

はちょうちょう。

はちょうちょうだから、初見できるよ。という顔をして楽器を構えた。

そうしてむずかしいダブルストップのたびに
400メートル障害を練習するアスリートみたいに集中して
注意深く指を弦にならべ
弓をひとつひとつまっすぐ当て
転調しながら
主題が裏返しになるところまでゆるやかに読み進んで行った。


体の中身が部屋から抜け出して宙に浮かんで行くみたいな夜。


ゴールドベルグとは誰か、訊かれたので、その話を少しした。

そうだねつまり夜の音楽なんだ。
さいごにアリアが戻って来たときは、子守唄みたいにひっそり弾くのかな。

眠れたかねえ!その人。
そのひとがやっと寝たら、ゴールドベルグさんほっとしただろうね。

そういえば、ゴールドベルグ君ってあんたぐらいの年齢だったんだよねそのとき。



「少し死んだ」ような、さみしい気分になった夜だった。



でも


狂おしいぐらい祝福された気持ちでもあった、かもしれない。















にほんブログ村 クラシックブログ 鍵盤楽器へ
にほんブログ村

にほんブログ村 海外生活ブログ ベルギー情報へ
にほんブログ村

にほんブログ村 音楽ブログ 音楽活動へ
にほんブログ村
[PR]
by momoyokokubu | 2012-05-05 08:17 | 鍵盤楽器