人気ブログランキング | 話題のタグを見る

おるがにすと・クロニクル Chronicle of an Organist

momokokubu.exblog.jp
ブログトップ

4/15予習編その1

ドイツ語でニ短調のことを

デー・モール

と言います。バッハのオルガン・トリオ・ソナタ第3番の調、d-Mollにちなみ、2013年春の演奏会ではこのニ短調の作品を中心に据えました。

「トリオソナタクラブ会報第10号」でお知らせした通り、今日からすこしづつ、4月15日(月)武蔵野市民文化会館での演奏会、「ニ短調d-Mollをめぐるオルガン・デュオ・リサイタル」のプログラム内容を予習…というと学校みたいですが、前もって知っておくと当日もっと楽しめるかな、と思うことをつらつらと書いて行きたいと思います。

プログラム最初の曲はバッハの「パストラーレBWV590」から、最初の1楽章です。
「パストラーレ」とは田園風景のこと。6分の8拍子(「んーチャチャ・んチャチャ」)のリズムがめんめんと続く感じから、私は「川の水の流れ」や、「草原に風がわたり草がなびく様子」、鳥の声、風の音…などをイメージしています。それも、その細部の描写ではなく、目の前にひろびろと開けた全体の風景から、「あ〜気持ち良い!」という要素をピックアップした感じです。

「パストラーレ」音楽は、イタリアのローマ周辺で「ピッフェラーリ」と呼ばれた「羊飼い音楽家」の演奏に由来しているらしいです。ピッフェロ(リード管のついた笛で、大きくて低い音のものや子供が吹く小さくて高い音のもの有り)と伴奏担当のザンポーニャ(バグパイプのような楽器)に歌もつけて、クリスマス近くなると山から街の中に下りて来てマリア像のあるところで演奏したそうな。

4/15予習編その1_e0203829_1836481.jpg


(注:このサイトを参考にし、画像をお借りしました)

絵では、一番前のおじいさんがザンポーニャを吹き、真ん中の子供と若者がピッフェロを、左の陰にいるお姉さんが歌を担当していると思われますが、若者はお姉さんの歌声にぼーっとして、ちゃんと弾いてないみたいにも見えますね。(または「あんた、繰り返し有りって言ったでしょ?!」とお姉さんに鋭く非難のまなざしで見られて弾けなくなってしまったか、どっちか)

パストラーレは、一般にヘ長調の作品が非常に多いのですが、それはこの素朴なザンポーニャやフィッファーレがファの音を主音にして調整されていたからだと思われます。そして3度(ドを弾いたときならミの音)と6度(ドを弾いた時ならラの音)でメロディーが平行して移動する特徴がありますが、この楽器編成で、さらに演奏しているのも羊飼いの人々ということで、耳に心地よく、易しくつけやすい「3度−6度」のハーモニーが多用されたのではないかと思います。

ではなぜファの音を中心にした楽器になったのか?
教会ではレを中心にした旋律(ドリアン旋法と呼ばれる)が大きな祭典の日のためのミサで使われた伝統があります。
それに比較すると、3度高いので、重厚さが取り払われて軽さ、明るさが加味されます。
上の絵のような若い娘が戸外で歌うなら高いファは小鳥のようによく響いたかもしれません(ミサでは旋律を歌うのはテノールの男性だったことも比較すると)。

「教会旋法(教会モードともいう。これは服装のことではありません)」が臨時記号(シャープやフラット)を「臨時」にしか使わなかった長い時代を経て、バッハは「調性」というものを確立させた音楽理論家の顔も持っています。時代がそれを可能にした=時が熟したのだ、というのも事実ですが、バッハが「平均率」作品集を書き上げた時点で、「『ドレミファソラシド』はハ長調で臨時記号はなし」「『レミファソラシbドレ』はニ短調でフラット1個つける」というように「西洋クラシック音楽の『調性』の理論」が「デフォルト」化した、ということは実はものすごい音楽の歴史の転換だったと思います。

その調性のしくみの中において、パストラーレのヘ長調は、今回の演奏会の本題であるニ短調の「平行調」と呼ばれ、音階を構成する7つの音が全て同じことから「同じ家族」とみなされます。ヘ長調でもニ短調でも、用いる音のうちレ、ミ、ファ、ソ、ラ、ドの6つはピアノでいうと白鍵で、シの音だけはその左側にある黒鍵、シのフラットだからです。

話が専門的になってしまいました!

では!このへんで今日のまとめ、行きます。


060.gif060.gif060.gif

本日のまとめ

武蔵野のコンサートの前半は、私がバッハの作品のみを演奏します。
コンサートの最初の曲は、そのバッハの「パストラーレ、ヘ長調BWV590」。
(ちなみにBWVというのは、バッハの作品の目録番号で、Bach-Werke-Verzeichnisの略です)
演奏会のテーマであるニ短調の家族の調なので、ニ短調を引き立てる導入として選曲しました。
イタリア風の牧歌的な音楽です。


本日の聴いとこう!

バッハのパストラーレBWV590の1楽章


060.gif060.gif060.gif

追伸。
明日のブログアップ時に、音源をMySpaceMusic経由でアップロードしてみたいと思います。
本当は今すぐできたら良いのですが、長い間使わないうちにダウンロードがしににくくなってしまったようです。FileDenを用いる方法が紹介されていたのでやってみたいと思うのですが、今から練習のため今日は時間が足りずできません…

桃代のMySpaceMusicで、以前ダウンロードしたものはそのまま聴けるようになっているのでそれでも聴きながらお待ち下さいね…


(技術的な説明)このMySpaceMusicページでは、YouTube(mp3データ)よりも良い音で聴くことができるので(waveデータ)、私は個人的には利用し続けたいと思っていますが、iTunesなどのサイトで商品として紹介されていて、一部試聴できるようになっているものとはまた違う音楽データなので、CDに落として鑑賞するほどの音源ではないと思われます。今週から発売になる「バッハとニ短調」を購入して下さった方は、そのCDの1曲目を聴いていただくのが最も音質は良いです。

このページで紹介されています。
タワーレコードなどでも購入できるようです。

4/15予習編その1_e0203829_21404376.jpg


↑全ての作品で用いたストップの組み合わせ表と、詳しいオルガン的解説付き。日本での発売限定の説明書になっています。


















にほんブログ村 クラシックブログ 鍵盤楽器へ
にほんブログ村

にほんブログ村 海外生活ブログ ベルギー情報へ
にほんブログ村

にほんブログ村 音楽ブログ 音楽活動へ
にほんブログ村
by momoyokokubu | 2013-03-10 20:34 | コンサート予習用