おるがにすと・クロニクル Chronicle of an Organist

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「礼拝と音楽」155号(2012秋号)

「礼拝と音楽」155号(2012秋号)はリードオルガン特集です。

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その中でハルモニウムの記事を載せていただきました。

日本や北アメリカでは、ふいごの仕組みの違いから、吐気式のがハルモニウム、吸気式のがリードオルガンと呼ばれています。ヨーロッパにいると実は吸気式なのにハルモニウムと呼ばれている楽器も存在したりして、一概にはいえない所はあるのですが、私の感覚ではストップ・リストを見れば一目瞭然である、と思われます。そのあたりの違いが、「礼拝と音楽」のいくつかの記事を合わせ読むとよくわかります。私は大人になってからイギリスとベルギーで音楽を学んだので、ハルモニウムと呼ばれるものの方が音としては親しみがあります。しかし子供の頃、日本で出会った足踏みオルガンは全てリードオルガンだったと思われます。ストップ・リストを思い出すまでもなく、音色が違いました。

さて、「ハルモニウムが吐気式?意味がよくわからない…」という方もいると思います。吐気と吸気の原理を、ハーモニカを思い出して考えてみましょう。


小学校で吹いたハーモニカ。ドの場所に口を置いて、吹くと「ド」、吸うと「レ」が出ます。
ミの場所に口を置いて、吹くと「ミ」吸うと「ファ」が出ます。

…ちなみに、シの場所に口を置いて、吸うと、シが出ますが、次のドを「吹く」ためには口を次のドの位置に移動します。(ドレミファソラシ、は全部で7つの音でできているので)現在のクロマティック・ハーモニカでは、シの場所でもドが出るようなので、シの場所でもドの場所でも「吹け」ばド。さらに、「レバー」をかけることで全ての音が半音上がる(つまり#になる)しくみのようです。私が小学校で昭和50年代に使ったハーモニカは、学校用ということで「ダイアトニック式」で、シャープは出なかった気がします。また、シの場所でドが出なかった気がします。記憶は定かではありませんが…話が逸れました!

ここで言いたいのは、ハーモニカは、吹いて、吸う、というように「呼吸」というものが(文字通りだと、呼んで、吸うですね)その繰り返しであることを利用している、珍しい「管楽器」であるということです(吹くのみで鳴るフルートやオーボエとは違う)。共鳴させるための管がついていないことで管楽器とも言い切れないので「リード管楽器」になるのでしょうか。

ハルモニウムやリードオルガンは、(口ではなく)両足で空気を風箱に送り込む構造なので、足で踏んだときに空気が吹くしくみにもできるし、空気を吸う仕組みにもできます。扇風機のモーターが回ることで風を「吹かせたり」、掃除機のモーターでは「吸う」しくみになったりするように。

ハルモニウムは、そこを「吹く仕組み式」にして、発明されました。

まず、ハルモニウムの「おかあさん」であるパイプオルガンのふいごは「吹く仕組み」です。大パイプオルガンや、ポジティフ・オルガンに含まれることのある「Regalリーガル」ストップこそが、ハルモニウムのご先祖なのですが、普通のパイプも金属のリード板も同じふいごと「風箱(空気をためておく箱)」を使って鳴らすのですから「吹く仕組み」です。

ちなみに、ハーモニカの起こりは、パイプオルガンを調律するための「笛」でした。リーガルのリードをひとつ笛の中に入れて携帯しよう、と作ったのがドイツのオルガン建造家の人だったらしいです。そういえば、ア・カペラ合唱の指揮者が「La~」と鳴らした音が音叉の音と違うので、見たらまさしくこの「リード笛」だったりすることがあり、ヨーロッパでは今でも出回っているようです。

北アメリカに渡ったハルモニウムは「吸気式」になり、一般化されてリードオルガンの名称で生産されました。吸気式のリードオルガンは空気が安定していて弾きやすいということが一般に言われますが、ハルモニウムもエクスプレッションのストップを入れないで弾けば、足踏みが不定期でも風箱内の空気は一定に保たれるので空気量は安定します。ただ、出だしの音が出しやすいのは吸気式=リードオルガンです。そして、ハルモニウムは、エクスプレッション・ストップを入れて、ニュアンス豊かに演奏出来る、ということこそが特徴なので(パイプオルガンにはできないことが可能である、という点で)空気を安定させるということは表現力も減る、ということではあります。リード・オルガンの空気が比較的安定しているのは吸気式だからで、空気安定装置がついているからではない、と私は理解しているので、表現力は同様にあると思います。ただ上記のように構造が違うため、表現するための技術が違ってくると思います。

というわけで、吐気式と吸気式では、演奏するレパートリーが違う、音色が違う、そういったところでリードオルガンとハルモニウムは違う。と述べることは出来ますが、基本的に両者の置かれた現状は近いものがある、それを今回の「礼拝と音楽」の特集はよく総括しているように思います。

わたしの書かせていただいた記事では、ジャン・ラングレ(20世紀のフランスの作曲家)のハルモニウムのための小品をふたつ例にあげて、レジストレーション指定の読み方を主に記しました。一曲はクリスマスの「ノエル変奏曲」です。難しい曲ではありませんので、この12月にむけて、ハルモニウムをお持ちの教会の方や、ストップの似たものを利用することでリードオルガンで演奏できそうな方は楽譜をぜひ見つけて弾いてみてください。(見つけられない方はメッセージを頂けたら探すお手伝いをします)

次のブログではハルモニウムの「大曲」として、カーグ・エラートの作品のレジストレーションを読解したいと思います。「礼拝と音楽」の記事で紹介した「芸術ハルモニウム:Harmonium d'Art」と呼ばれる大きなハルモニウムに付属していて、記事にはページ数の都合で載せられなかった機能について説明できたら、と考えています。

「礼拝と音楽」155号(2012秋号)はここで購入出来ます。


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by momoyokokubu | 2012-10-24 21:29 | 鍵盤楽器