In English below
ブリュッセルの聖ミシェル・聖グデュル大聖堂で、4月15日から5月31日まで展示されていた、ヤン・ゴリス氏の油絵の連作のうちの一枚です。いくつかの「イエスのたとえ話」を題材にしていて、この絵は、「からし種のたとえ」の一枚です。
からしの種は、見たことのある人はわかると思いますが、まん丸くてあまり「種らしく」ありません。ひまわりの種のような、きれいなしましまもついていないし、よく種にあるような、「尖った部分」もないので、種に見えない。からしにもいろいろあるようですが、西洋のマスタードの粒よりもさらに小さい原種のからしは、米粒の100分の1ぐらいの大きさに見えます。
それを蒔くと、良い土に育てば、4メートルを超える大きさに育つ。
聖書の引用。
「また、ほかのたとえを彼らに示して言われた、『天国は、一粒のからし種のようなものである。ある人がそれをとって畑にまくと、それはどんな種よりも小さいが、成長すると、野菜の中でいちばん大きくなり、空の鳥がきて、その枝に宿るほどの木になる』」
(マタイによる福音書13章31- 32節)
また、「最初は小さいものが驚くほど大きくなる」という意味で、からし種のような「信じる気持ち、信仰の深さ」を持ち、育みなさい、という風にたとえられるようになった。
そして、さらに、
しかし主は言われた。「もしあなたがたに、からし種ほどの信仰があったなら、この桑の木に、『根こそぎ海の中に植われ。』と言えば、言いつけどおりになるのです。」
(ルカによる福音書17章6節)
と、いうたとえが出て来るのです。
大げさな!というか、表現力めっちゃ豊かなんですけど、
それを題材にして、根こそぎ海に行っちゃって生えている木を、ゴリスさんは縦2メートルの絵に表現しました。
ゴリスさん本人による連作の説明会があって、私は直接ご当人に会ったことが無かったのですが共通の友人に誘われて参加した時に、この絵を見て、
「津波で生き残った唯一の松を思い出すなあ。」
と、じーんとしていたら、その日は、ゴリスさんのファンの人たちが大勢来ていて、次々に作品を購入している模様。ゴリスさんが、前日の電話で、
「東北のチャリティーのために、一枚寄付したいから、好きなのを選んだらいいよ。」
と言ってくれていたので、この絵がいいなあ、ととっさに思いました。でも、この絵は展覧会で最も高い、2000ユーロぐらいの値(だったかな?細かい数字は忘れました)がついていたのです。
それに、15枚ぐらいある絵の中から一枚と言われても、独断で選んでいいのかなあ…と頭では悩みつつ、この海の青い色にも惹かれてそこにたたずんでいると、
私の目の前で見事お買い上げされました
と、いうわけで、
5月の展示期間中、「売れなかったものから選ばせてもらいます」ということにして、5月31日に展覧会がクローズになるのを待っていたら、絵画の引き渡しと残った作品の梱包をしてくれた芸術家担当の神父さん、アラン・アルノルド神父が、
「からし種の、鳥がいる方のやつ包んであるから取りに来てよ!」
と教えてくれました。
同じ大きさの、からしの木に鳥が2羽いる絵を、「売れ残りと言わずに、これがからし種関連で良さそうだから、日本用にキープするように」と、ゴリス氏は、売れていないのに赤いステッカーを張っておいてくれたんだそうです。
昨日の、ブリュッセル大聖堂での12時半からの精霊降臨祭のミサでは、クリスティアン・ヴィルヌーヴのミサ曲がベルギー初演され、「こんな前衛的なミサってあり得るのか?!」と、慣れているはずのMesse Festive常連も仰天しました。それを堂々と司式したアルノルド神父は、サクリスティの奥の部屋で赤いペンテコステ用の祭服を着替えながら、わたしに作品の置き場を示してくれました。
その薄暗い石の部屋で、日本に行くのを待っていてくれた、2メートルもある「からし種の木と鳥たちの絵」が、すごく特別な「運命」でそこにあるのだという気がしたのでした。
そちらの写真はまだ撮っていないので、自宅に夫とふたりで大事に運んだら、壁に架けて、写真を撮ります。出発の前日まで壁にかけ、直前に木枠からはずし、巻いてキャンバスだけトランクに入れて日本へ持って行き、帰国したら演奏会の日までにDIYショップで木を購入して枠を再構築する予定です。
そして、
7月16日の演奏会で販売します。
演奏会は、おかげさまでチケット完売したそうです。
購入して下さった皆様どうもありがとうございました。
是非この「からしの木」に会うのも楽しみにしていてくださいね。
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